口コミの担い手には、寿命の違う二つの流派がいます。
Googleマップで星5の口コミを見たとき、それを書いたのが「どんな人か」を気にしたことはあるでしょうか。全国の弁護士事務所・約65,000件のGoogle口コミを分析した私たちの研究では、投稿者60,747人の素性を一人ずつたどりました。すると、口コミの担い手は決して均質ではなく、活動の寿命がまったく異なる二つの流派に分かれることが見えてきました。この記事では、ローカルガイドの口コミがどこまで信用できるのかを、投稿者データの観点から考えます。
Googleには、訪れた店や施設のレビュー・写真を投稿すると貢献度に応じてレベルが上がる「ローカルガイド」という仕組みがあります。ここで大切なのは肩書きそのものではなく、継続して投稿しているという「履歴の蓄積」です。一度きりの投稿者と違い、ローカルガイドはこれまでにどこを訪れ、どう評価してきたかという足跡が残ります。この足跡があるかどうかが、口コミを読み解くうえでの一つの手がかりになります。
投稿者を「最初の投稿から最後の投稿までの期間(活動寿命)」で並べると、分布はなだらかな山にはなりませんでした。一方の端には、たった一度だけ投稿してそれきり消える使い捨てアカウントが大量に集まります。その活動寿命は中央値0.0ヶ月、つまり最初で最後が同じ日です。もう一方には、数ヶ月から年単位で各所を訪れ続けるローカルガイドがいて、その活動寿命は中央値約12.2ヶ月でした。同じ「口コミの投稿者」でも、滞在時間がまるで違う二つの集団が混ざっているのです。
さらに、投稿者一人あたりのレビュー数の偏り(ジニ係数)は0.058と極端に低い値でした。これは、大量に書く「主役」がいるわけではなく、ほとんどの人が一粒ずつ投稿していく「砂粒の海」のような構造であることを示しています。
では、ローカルガイドの評価はなぜ相対的に参考にしやすいのでしょうか。理由は「履歴の蓄積」にあります。継続的に投稿している人であれば、過去にどんな店を訪れ、★いくつを付けてきたかを確認できます。いつも★5しか付けない人なのか、辛口の評価もある人なのか、その人なりの基準が見えてきます。一度きりで消えるアカウントには、こうした手がかりがありません。同じ星5でも、足跡をたどれる人の星5のほうが、背景を読み取れる分だけ参考にしやすいのです。とくに、作ったばかりで履歴のないアカウントばかりが特定の事務所に集中していたら、自然な来客では説明しにくい集まり方だと言えます。
ここで一つ注意が必要です。ローカルガイドだから本物、と短絡するのは危険です。履歴の蓄積は判断材料を増やしてくれますが、それ自体が真実性を証明するものではありません。さまざまな場所を巡って一見自然な足跡を作り込んだアカウントがあり得ることも、頭に置いておくべきでしょう。大切なのは、肩書きや投稿数といった単一の指標で白黒をつけるのではなく、誰が・いつ・どんな履歴とともに書いたかという「集まり方」全体を見ることです。本記事は特定の投稿者やアカウントを評価・断定するものではありません。
▶ この分析の根拠となった全国調査(本編)を読む 全国6,652事務所・口コミ65,000件・投稿者60,747人のフォレンジック分析。匿名の一次データCSVも公開しています。Googleローカルガイドの口コミは、履歴の蓄積がある分、一度きりで消える使い捨てアカウントよりは参考にしやすいと言えます。投稿者の95%が生涯1回のみの投稿で、使い捨て垢の活動寿命が中央値0ヶ月であるのに対し、ローカルガイドは中央値約12.2ヶ月という二峰構造は、その違いをはっきり示しています。とはいえ、履歴があること自体は真偽の保証ではありません。点数や肩書きではなく、口コミがどう集まったかという全体像に目を向けることが、口コミと付き合ううえでの一番の手がかりになります。
A. 継続的に投稿しているローカルガイドの評価は、投稿履歴の蓄積がある分、一度きりで消えるアカウントよりは参考にしやすい傾向があります。ただし履歴があること自体は真偽の保証ではなく、作り込まれたローカルガイド風アカウントも存在します。
A. 投稿者名をタップして投稿履歴を見るのが基本です。本研究では投稿者の95%が生涯1回のみの投稿で、こうした純粋な使い捨てアカウントの活動寿命は中央値0ヶ月でした。投稿が1〜2件しかないアカウントが特定の事務所に集中していたら注意が必要です。
A. 投稿1件が即サクラというわけではありません。実際、投稿者の95%は生涯1回のみの投稿で、その大半は普通の利用者です。単独の評価で判断せず、ローカルガイドを含む複数の投稿者の集まり方として見てください。
A. 必ずしもそうとは限りません。ローカルガイドは履歴が蓄積される分、相対的に参考にしやすいだけで、本物である保証ではありません。継続的に活動しているように見せかけて作り込まれたアカウントもあり得ます。